ダライ・ラマ法王

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ダライ・ラマ法王 記者会見

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(1999/10/10(日)午後3時40分 成田 )

ダライ・ラマ法王は講話のためアメリカ、オランダ、イタリアへ向かう途中、トランジットで日本に立ち寄り、成田空港近くのホテルで記者会見に応じた。内容は以下の通り。

 

民放テレビ局記者:
─ 建国50周年記念を迎えた中国政府が現在チベットにとっている対応についてどのようにみているか?
ダライ・ラマ法王:

いわゆる中国政府の「解放」以来、もちろん中国はチベットに建設的なこともやっているが、それよりも破壊、チベットの人が体験した苦しみの方が凌駕している。例えば、パンチェン・ラマが亡くなる前、公的発言をした。

そのパンチェン・ラマが亡くなってからも中国はチベットに建設的なこともしたが、チベット人に対し破壊は続いている。このことに対して正確に把握することが必要である。

外国報道記者:
─ 東ティモールとチベットの現状が似ていると思わないか?
ダライ・ラマ法王:

似ている点もあるが、違う点もある。いずれにせよ、私の求めているのは、独立ではなく、真の自治である。徹底した非暴力の。もちろん東ティモールの人達が意思表示する機会を得たことは素晴らしい。しかし、多大な犠牲も払い、苦しみを生んだということも忘れてはならない。

フリージャーナリスト:
─ 日本のメディアの反応についてどう思うか?メディアにこれから期待することについて。
ダライ・ラマ法王:

日本のメディアに限ったものではないが、アメリカであろうと、中国であろうと、メディアは正義、人間性の価値というものに対してしっかりした考えを持って伝えること、常に腐敗、不正なものに対して真実を追求する姿勢が必要だと思う。国境を越えたところにメディアの普遍的な義務がある。

中東出身外国新聞記者:
─ まだアラブ諸国を歴訪しない理由は?中国とアラブ諸国が関係が深いからかもしれないが。
ダライ・ラマ法王:

過去40年、残念ながらその機会は生まれなかった。私自身が宗教間の協調、対話を促進しており、その一環として他の宗教家を誘って聖地巡礼を行っている。エルサレムに2度、北フランスも、インド各地も訪れた。以前からアラブ世界、イスラム文化圏も訪れたいと思っている。私はイスラム教徒ではないのでメッカ巡礼は難しいかもしれないが。(笑)

国内新聞記者1:
─ 今、チベットの中国化が進んでいる。チベット文化も侵食されている。チベットにいるチベット人、チベットにいる中国人(漢人)に何かメッセージを。
ダライ・ラマ法王:

私の提言する中道的アプローチとは、独立を要求しない、中国からの分離を要求しない、この2つを中心にしている。しかし、歴史に対する認識は中国とチベットには相違が見られる。歴史は過去のことである。過去の行ったことは今やり直すことも出来なければ、変えることも出来ない。法律家に過去のことは任せるべきだ。私たちにとっては未来が大事である。少なくとも私は、中国と分離することではなく、一緒に方法を見出そうと考えている。歴史については、中国の専門家、チベットの専門家、外国の歴史家、法律家が来て議論し、真実を明らかにすることが望ましい。

国内新聞記者2:
─ 中国政府との対話再開についてどう考えているか?
ダライ・ラマ法王:

内政に関しては全てチベットに任せてほしいということ。例えば、環境問題、チベットのことはチベットが良く知っているで任せて欲しい。外交と防衛に関しては中国に委ねてもいい。中国の憲法においてもチベットの自治ということを明確にしていた。実際、毛沢東も周恩来もチベットの自治に所見を述べていた。56年に、周恩来がインド来訪の際、当時の首相ネールに「チベットは決して中国の他の州のような扱いをすることはない」と言明した。同じように鄧小平も、79年に「完全独立ということはもう話し合う余地は無いが、それ以外は何でも話し合う」と発言した。現在のところ、何が違うかというと、チベットが最も貧しくて厳しく抑えつけられている場所ということだ。

(取材/T2)